株式会社AWARDの渡邉です。
米ドルは世界の基軸通貨あり、世界で最も流通しており、力のある通貨となります。そして、このドルの覇権を支えてきたのが、『ペトロダラー』体制です。
1.『ペトロダラー』体制とは?
2.ウクライナ侵攻で揺らぐ原油のドル決済
3.サウジアラビアの動き
といった流れで、原油の決済を巡る世界の動きについてご紹介させていただきます。
1.『ペトロダラー』体制とは?
『ペトロダラー(Petrodollar)』と聞いても馴染みのない方は多いのではないかと思いますが、『オイルマネー』という言葉はほとんどの方があるのではないでしょうか。
一般的に、産油国が原油輸出によって得た資金のことを広義ではオイルマネーと呼びます。中東を中心とした産油国が持つお金のことです。
日本では『オイルマネー』ですが、欧米では『ペトロダラー』と呼ばれます。ダラーとはドルのことであり、原油取引がドル建てで行われることに由来しています。
先述の通り、国際的に原油取引はドルで行われています。米国の総合石油会社が原油取引を支配していた歴史が、原油はドルのみで取引されるという体制を作りあげてきました。
また、この原油取引のドルへの一元化により、サウジアラビアなど産油国が石油を売って得たドルで米国債を買う循環も構築されてきました。これが『ペトロダラー』体制であり、米国の経済を支える原動力になってきた歴史があります。
2.ウクライナ侵攻で揺らぐ原油のドル決済
原油のドル決済は、ドルの世界の基軸通貨としての地位を維持する上で、過去も現在も強い力を発揮してきています。
一方で米国と友好的ではない国々は、基軸通貨ドルへ依存する体制に対してリスクを感じているのは間違いありません。ウクライナへの侵攻により、ロシアはドル決済システムの国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外され、新たにドルを手に入れたり、ドルでの決済を行うことが難しくなりました。
こうした状況を見て、中国は『ペトロ人民元』体制を構築する構想を進めていると言われています。原油決済をドルでしかできない体制から、自国の通貨でも決済できる状況を作り上げる、ということですね。
3.サウジアラビアの動き
そんな中、原油供給国のサウジアラビアが、中国の有力協力国として浮かび上がってきています。
原油需給面でも、米国は国内での原油産出量が上がり原油の対外依存度が薄まっており、中国は世界最大級の原油輸入国となっているため、中国による原油の決済を人民元建てにするという構想は現実味を増していると言えます。
実際に、中国の習近平氏がサウジアラビアを2022年12月に訪問しており、両国はエネルギー政策・探査を巡る協力で合意しました。中国はサウジ産原油の購入を増やす取り組みを進めるとともに、そうした取引の決済を人民元で行いたいと習近平氏は表明しています。
ドルの基軸通貨の地位を強力に支えてきた、原油のドル決済に揺らぎが生まれている、というのを知っておくと良いでしょう。人民元での決済が今後増えてきた場合、世界のパワーバランスにも影響があるでしょうし、ドル安のきっかけにもなり得るので注視していきたいと思います。