株式会社AWARDの渡邉です。
米国にやや景気減速の兆しが見えてきました。しかし、景気減速とともになぜか株価は上昇してきています。
現在の世界経済を取り巻く状況をまとめてみましょう。
1.米国のGDP2四半期連続のマイナスに
2.インフレと利上げの行方
3.台湾をめぐる懸念
といったテーマについて見ていきたいと思います。
米国のGDP2四半期連続のマイナスに
7月28日に米国商務省が発表した2022年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率の速報値は前期比年率マイナス0.9%となりました。
前期のマイナス1.6%に続いて2期連続のマイナス成長となったわけですが、今回のサプライズは、市場予想のプラス0.3%を大きく下回ったことです。
GDPを押し下げた要因は、
・企業が景気減速に備え在庫の調整を始めたこと
・住宅投資が利上げで住宅ローン金利が上がったことで減速していること
などが主たるものになります。こうした傾向が続けは米国が景気減速には入る可能性もあると言えそうです。
インフレと利上げの行方
こうした状況の中でも、6月のインフレ率は高止まりしていました。米国労働省が20227月13日発表した6月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月より+9.1%の上昇でした。
3ヵ月連続で前年比+8%以上の上昇だったインフレ率ですが、6月はさらに加速し、9%台の上昇率となりました。このインフレ率は1981年11月以来、約40年半ぶりのものでした。
こうした状況を踏まえ、米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月26、27日に開催した定例会合で、主要政策金利を前会合に続き、0.75%引き上げることを決めています。
これで今年に入ってから+2.25%の利上げが実施されたことになります。
こうした利上げは株価にとってはマイナスの影響が大きいと考えられます。しかし、実際には6月半ば頃から米国を代表する株価指数であるS&P500は+13%ほどの上昇となっています。これは一体なぜなのでしょうか。
市場参加者の思惑として、米国の景気後退の兆しが強まればFOMCで利上げペースの鈍化や、近い将来のうちに利下げが実行に移されるかもしれない、というのがあります。こうした思惑により、株価は反転してきているのです。また、企業の四半期決算の公表が順次行われ、全体的にそこまで悪くない、というのも株価の下落が止まったもう一つの要因になっています。
台湾をめぐる懸念
そして、ここに来て世界の懸念として急浮上してきたのが、台湾を巡る米国と中国の動きです。
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問が8月2日から8月3日にかけて行われました。米下院議長は、大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職となります。
ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、周辺地域では軍事的緊張が高まりました。中国軍はペロシ氏の訪台前に、空母2隻を出航させました。
8月2日夜からは軍事演習を開始しており、8月4日からは台湾を取り囲むように6カ所で訓練を行う模様です。
ロシアによるウクライナ侵攻も、多くの方が実際には侵攻することはないだろう、と考えている中で起きました。ウクライナの状況を見る限り、台湾有事は絶対に起こらない、と考える方が危険かもしれませんね。
今年の秋には米国の中間選挙もありますし、中国の共産党大会も行われます。政治的な思惑が交錯しているように見受けられますので、この2国の動向には注意しておきたいところです。日本も非常に大きな影響を受ける位置にいます。
米国の景気、インフレ、利上げ、台湾を巡る米中の動きなど、気になるところは多いですが、株価は6月半ばより持ち直してきています。引き続きこれらのニュースに気を付けつつ、世界の動向を見ていきましょう。