20年ぶりの円安水準を更新

海外

株式会社AWARDの渡邉です。

2022年6月7日未明に1ドル=132円にタッチし、ドル円が20年ぶりの円安水準を更新しました。5月9日にピークをつけて一旦反発をしていたドル円ですが、ここに来て再度ドル高円安が進む気配を見せています。

ドル高円安の要因は?


年初からの急激なドル高円安の進行は、下記のような流れで起きています。

①米国のインフレが記録的な水準になってきている

②米国の金融当局がインフレを抑え込むために史上に類をみないスピードで利上げを進めようとしている

③米国の金利水準が上がり、日米の金利差が拡大することでお金が円からドルに流れている

こうした流れはどうすれば止まるかというと、

(1)米国を始めとした世界の景気が腰折れし、利上げのスピードが弱まる

(2)日本も金融の引き締めを開始する

などが考えられます。5月につけたドル高円安から一旦反発していたのは、米国の金利上昇が落ち着いていたからでした。将来的な複数回分の利上げを長期金利が織り込んだのに加え、景気の腰折れ懸念が出てきたことにより、反転していたわけです。

米国の景気の強さと、日銀の姿勢


そして今回のドル高円安の進行は、上で挙げた(1)、(2)を否定する動きが見られたことにより起こっています。

まず(1)に関しては、6月3日(金)に発表された米国の雇用統計が力強い数字を示しており、利上げのスピードが弱まる観測がほぼ消えました。これにより、米国の利上げ路線は継続すると市場全体が見なしています。

(2)に関しては、6月6日に東京都内で行われた日銀の黒田総裁の講演で「金融引き締めを行う状況には全くない」いう発言があったことも影響していると考えられます。日米の金利差の拡大に対して全く動く姿勢を見せない日銀の様子を見たら、為替のトレーダーたちは安心してドル買い円売りができますよね。

再度円安が進んだのはこのような背景があるのではと考えられます。

円安は良いのか悪いのか


さて、ではこうした円安は私たちにとって良いものなのでしょうか。それとも悪いものなのでしょうか。

円安によって起こる影響を考えてみると、

・物価が上昇する

・輸出企業の業績が良くなる

・業績が良い企業が増えれば給料が上がる

・外貨建ての資産の人気が増す

・観光客が増える

といったことが挙げられます。

円安による影響を注視したいポイント


この円安が良いものになるかどうかのポイントとして、大きく2点ポイントがあると考えています。

1つは円安によって物価が上昇したときに、人々の間で様々なモノに対する購買意欲が維持されるかどうか、という点です。6月6日に行われた日銀黒田総裁の講演では「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」との見解が示されましたが、これは本当なのでしょうか。物価が上がることで買い控えが起これば、日本の経済は縮小する方向に進みます。

物価が上昇した中でも、日本人は今まで通りにモノを購入するのか、というのは経済が回るかどうかの大きなポイントだと考えられます。

もう1つは円安が進行したときに、世界に対して販売を伸ばすことができ、業績を上げれる輸出企業がどれだけあるか、ということです。平成の初期などと比べると、世界における日本の技術力や製品力は相対的に落ちている現状があります。現在の日本には世界の時価総額でTOP30に入っている企業は一社もありません。

為替が円安に振れても、価値が高い商品でなければただ安いからという理由で選ばれることはないのでは、という懸念があります。円安は日本企業の業績を伸ばす、という意見を良く耳にしますが、今の円安水準が続いたときの各企業の業績を何期か見てみないとわたしには判断がつかないな、と感じます。

個人ではドル資産を持つなどの対策を


こうした大きな流れの中で個人ができるのは、ドル資産を持つ、ということです。

あまり円安が進んだところでドルを買うのは勿体ない、と感じる方もいらっしゃるかと思います。ただ、1年後を考えたときにどのくらいのドル円の水準になっているか、今の様子を見る限り読めないな、とも思います。もともと為替の動きを予想するというのは難しいことなのですが、米国の様子や、日銀の動かない様子を見ると、少しずつでも防衛策を取っておくのは良いと思います。

一度に大きな額の外貨を買うのはちょっと気が引けるという方は、ドル資産を積み立てていくのも良いでしょう。円だけで資産を持つ、というのは円安の影響をすべてマイナスの方向に受けることになりますので、できることからやってみてはいかがでしょうか。


執筆者:渡邉亮

こちらのコラムは日々金融情報に触れて頂きたいという想いから継続して配信しています。あなたにとって大切な方にぜひご紹介ください。

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