株式会社AWARDの渡邉です。
急激に円安が進んでいます。3月28日には1ドル=125円にタッチ。一度は123円台前半に押し戻されましたが、現在はまた1ドル=124円近くまでドル高円安が進んでいます。
なぜこれほど急激に円安が進んでいるのでしょうか。日本を取り巻く環境を含めて考えてみましょう。
世界中で進むインフレ
現在、世界中でインフレが進んでいます。新型コロナウイルスでダメージを受けた経済を支えるために、世界各国では大規模な金融緩和が行われました。
金融緩和の影響により経済は急回復を示し、米国の株価はわずか5ヵ月半ほどで元の水準を取り戻すまでに至りました。そして、その後も順調に経済は回復し、多くの企業がコロナ前を超える水準の利益を出せる状況になってきました。
しかし、そうした金融緩和と経済回復とともに起きたのは、急激なインフレでした。2022年2月の米国の対前年同月比のインフレ率は+7.9%。1年前と比べると物価が8%近くも上昇しているのです。これは経済回復の副産物でもあり、金融緩和の副作用でもあります。
これに加えて、ロシアのウクライナへの侵攻もあり、小麦の価格、原油の価格、貴金属の価格などがさらに上昇することになりました。こうした影響も物価に反映されてきていますので、インフレの抑え込みは世界中で大きな課題となっています。
利上げを始めた米国
そんな中で、インフレを抑えることのできる手段と言えば、金融緩和の逆であるテーパリングや利上げです。米国は2021年11月よりテーパリング(資産購入を減らすこと)を始め、2022年3月より利上げを開始しました。今後はQT(資産の売却)も始まっていくことでしょう。米国はインフレを抑え込むために、金融政策を駆使しているわけです。
利上げが始まったドルは、今までよりも金利がつくようになったため魅力が上がります。そして、経済の基盤も強い米国では企業業績も底堅い様子を見せています。また、ロシアによるウクライナ侵攻によって上がった原油価格などは、米国のエネルギー企業に恩恵をもたらしました。ドルは強くなっているわけです。
為替のレートというのは、需要と供給、金利差、国家間の経済力などに左右されます。こうした状況がある中で、日本では貿易赤字、経常赤字が続いており、相対的に世界の国々からみた日本の円の魅力が落ちてきているのです。
策がない日銀
円にとって厳しい環境の中で行われた3月17-18日の日銀の金融政策決定会合。会合後の会見で、黒田総裁は「インフレ水準が2%を大きく上回っている米欧と違い、日本が金利を上げる必要は全くない」と述べています。金融メディアであるブルームバーグでは、「商品高で物価2%は引き締め適切でない、円安はプラス」といった内容で報道され、その日のうちに1ドルは121円台に乗ることになりました。
加えて昨日3月28日には、複数日にまたがって国債を決まった利回りで無制限に買い入れる「連続指し値オペ(公開市場操作)」を実施することを発表しました。こちらは国債の金利上昇が日銀が躍起になって抑え込もうとしているという印象を市場に与えたと考えられます。
国債の金利が上昇すると、日銀が保有している大量の国債の価格が下がることになり、3月末時点の決算の内容が悪化します。金利を抑え込むことで、その状況をなんとしてでも避けようとしているのでしょう。
国債が日銀によって買い入れられれば、市場に流通する円の量は増えます。一連の日銀からのメッセージは、日本が円安を抑える手段を持たないことを市場に強く認識させました。こうして3月28日には2円ほどの円安が一気に進み、1ドル=125円にタッチすることになったわけです。
1ドル=125円ということは1ドル=100円のときと比較すると、海外のものを日本が購入するときに1.25倍の円を必要とすることになります。1000ドルは1ドル=100円のときには100,000円でしたが、1ドル=125円ですと125,000円です。
今後も円安、インフレは進行し、わたしたちの生活に物価上昇などで大きな影響を及ぼしていく可能性が高いです。外貨建ての資産を持つなどして、変化に備えておきましょう。