ロシア国債格下げ

海外

株式会社AWARDの渡邉です。

ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、世界各国がロシアに対する経済制裁を行っています。SWIFTという銀行間の国際ネットワークからもはじかれ、ロシアの経済は国際的に孤立を深めています。

そんな中でロシアの信用力を示す格付けが、格付け会社であるS&Pグローバル・レーティングにより格下げされることになりました。格付けとはどういった意味を持つのか、格付けの低下が国際社会にどのような影響を及ぼすのか見てみましょう。

格付けとは


信用格付けは、国や企業の発行する債券の信用力や元利金の支払い能力の安全性などを総合的に分析しランク付けしたものになります。

アルファベットなど分かりやすい記号で示されており、投資をする際、信用リスクを測る重要な指標の一つとなります。 格付けは民間の格付け会社によって行われますが、有名なところですと、

・ムーディーズ

・S&P

・フィッチ

などが存在しています。今回ロシアの信用格付けを大幅に引き下げたのは、この中のS&Pになります。格付けはS&Pグローバル・レーティングが担っており、S&P500などの指数を発表しているのはグループ会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスとなります。

ロシアの格付け


2022年3月3日にS&Pはロシアの外貨建ての長期債務格付けを「ダブルBプラス」から信用リスクが極めて高いとされる「トリプルCマイナス」まで8段階引き下げています。また自国通貨建ての格付けも投資適格級の下限である「トリプルBマイナス」から投機的等級の「トリプルCマイナス」まで引き下げました。この格付けは、通貨の価値の下落が著しいトルコや、債務不履行を繰り返しているアルゼンチンより下になります。

外貨に関しては主要7カ国(G7)によるロシアの中央銀行の外貨準備を凍結させる経済制裁が、大きなダメージとなり、債務不履行に陥る可能性が高まったとされています。また、ロシア側も外国人投資家に対してロシア国債の利払いを停止できる資本規制を導入しており、これらが合わさりロシア国債の信用は著しく低下しています。

信用力が落ちると国債は売られ価格が低下し、金利は上昇することになります。1ヵ月前には9%台だったロシアの10年国債の利回りは、3月4日時点では20%近くまで上昇しています。金利が高くても購入する投資家がいない状態になってきており、ロシアの国債が紙くずになりつつあると言えるでしょう。

ちなみに信用力の低下・国債の価格の低下とともに、ロシアの通貨であるルーブルも著しく価値が低下してきています。1年前には1ルーブル=1.5円前後でしたが、今月に入って1ルーブル=1円を切る場面も見られています。

国際社会に与える影響


それではこれらの格付けの低下は国際社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

格付けの低下が直接的に影響を与えるというよりは、実際にロシアの国債の利払いや償還が行われないことによる影響が大きいと考えられます。

3月16日に期限を迎える1億1700万ドル(約135億円)を筆頭に、年内に元本や金利の支払期限を迎えるロシアの外貨建て債券(社債含む)は2兆円超相当あるとのこと。これらの利払いや償還が行われないことで、ロシアは債務不履行(デフォルト)を起こしたということになり、ロシア国債やルーブルの信用は失墜します。

ロシア国債などの資産を保有している金融機関は財産を毀損することになり、経営状況に悪影響が出ます。いずれにしても、現在世界各国が行っているロシアに対する経済制裁は自国の経済にも返り血を浴びることを覚悟して行っているため、ロシアを取り巻く金融環境には今後も注目していきたいと思います。


執筆者:渡邉亮

こちらのコラムは日々金融情報に触れて頂きたいという想いから継続して配信しています。あなたにとって大切な方にぜひご紹介ください。

カテゴリーから記事を探す

最新の金融情報やセミナー
情報を日々お届けします