原油高と円安

海外

株式会社AWARDの渡邉です。

現在原油の価格が高騰していることをご存じでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大時には急落したWTI原油先物ですが、昨日には一時1バレル=95ドルまで上昇しました。

原油価格の高騰はここ2か月ほどは特に顕著で、昨年の12月初旬と比較すると現在1.5倍ほどの価格になっています。

さて、こうした原油高ですが、日本にとっては『円安』の要因となります。本日は原油高と円安の関係性について考えてみたいと思います。

原油高で円安になるのはなぜか


まず前提として、原油の価格が高騰すると、原油輸入国である日本は貿易収支が悪化し、円安につながる、という考え方があります。貿易赤字=国からお金が海外に流れ出していき通貨の信頼性が落ちる、ということになります。実際に貿易赤字国の多くは、恒常的な通貨安になる場合が多いです。

また、現在米国が利上げの検討を進めています。米国の金融当局はインフレを抑えるために利上げをする、という側面があるのですが、原油価格の上昇はインフレ率やインフレ期待を押し上げる効果もあります。

インフレ率が高まれば、米国の利上げペースは早まるため、日米の金利差は拡大します。すると、金利の高い通貨にお金は流れ込みますから、必然的にドル高円安が進む、ということになります。

原油価格から見た為替の適正値は?


では原油価格から見た為替の適正値はどのくらいなのでしょうか。為替を決定付けるのは原油価格だけではないのですが、昨日参加したある勉強会では、今のような1バレル=90ドルといった価格が継続するのであれば、1ドル=115~125円といったところではというお話しを伺いました。

原油は毎月の決済がドルで行われます。日本は原油を購入する際に、日本円を売って、ドルを購入しなければならないわけです。毎月実際に現金での受け渡しが行われるため、為替に与えるインパクトは大きいのです。

ちなみにドル円の為替で考えるのであれば、米国の状況にも目をやるのが重要ですが、現在の米国はエネルギー輸出国に変わってきています。原油価格が高いときには、米国内のシェールオイルの生産も問題なく採算が合うため、ドル自体は原油価格の影響を受けにくいでしょう。そもそも原油の決済がドルというのもありますしね。

原油高はいつまで続く?


石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど主要産油国でつくる「OPECプラス」の生産不足や余剰生産能力を巡る懸念により、原油市場の逼迫は今後も続く可能性が高いです。またウクライナ情勢をめぐる懸念も世界のエネルギー事情を悪化させるでしょう。

JPモルガンは今年の4~6月頃に1バレル125ドルに達する可能性があるといった見方も示しています。さらなる原油価格の高騰は、当然日本にとってはさらなる貿易赤字の拡大の要因になります。原油価格というとガソリン代に目がいきますが、

・円安の要因であること
・貿易赤字を悪化させること

の2点に対する意識も持っておくと良いでしょう。


執筆者:渡邉亮

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