貿易戦争エスカレート

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株式会社AWARDです。

米中の貿易戦争、関税の掛け合いが止まりません。5月上旬に合意に達するかと思われた米中の協議は、決裂しました。なんとか協議継続ということだけは決まっているため、最悪のシナリオは回避されている状況ですが、予断は許さない状況となっています。

追加関税の掛け合い


米国は10日、対中制裁の第3弾として約2000億ドル(約22兆円)に相当する中国製品に対する関税率を10%から25%に引き上げました。こちらは約5700品目が対象となります。一方で中国は報復措置として2018年9月に5~10%の追加関税をかけた600億ドル(約6兆6千億円)分の米国製品について、関税率を5~25%に引き上げると発表しています。

こうした動きを受け、米国は中国への制裁関税の第4弾として、携帯電話など約3000億ドル分の同国製品に最大25%の関税を課す計画も正式に表明しました。世界の二大経済大国の間での貿易戦争は両国のみならず、世界中の経済を停滞させる可能性があります。国際通貨基金(IMF)は、貿易戦争が深刻になれば米国の経済成長率は最大0.6%、中国も同1.5%下振れすると警告しています。

なぜ両国は合意できないのか


お互いが不利益になるにも関わらず、なぜ両国は合意に達することができないのでしょうか。これは問題の本質が、

・ハイテク技術を巡る覇権争い

・軍事的覇権争い

という両国の将来を決定つける2点にあるからです。米中通商協議を巡り、米国は中国に法改正を確約するよう求めています。中国は、建国100周年の2049年までに世界製造強国のトップとなるべく、IoTやAIなど最先端技術分野に5000億ドル超の補助金を投入するハイテク産業育成策を打ち出しています。こうした政策の撤廃などを米国側は求めているのです。

このままいくと2030年前後に中国は米国のGDPを抜くと言われています。巨大化する中国を脅威とみなし、米国に有利な状況を保とうとする米国側の考えから貿易戦争は長期化していると言えるでしょう。

両国は合意できるのか


協議は継続され、6月には米中の首脳会談も行われるようです。国家の覇権を争う問題であるため、どちらかの国が大幅に譲歩する可能性は低く、妥協点を探り合っているような状況でしょう。貿易戦争が継続するようであれば、世界経済は大幅に下振れすると考えられます。とはいえ、リーマンショック以来、継続して成長してきた世界経済の一つの調整局面と捉えることもできるかもしれません。起こるできごとが予想できれば各国の政府は対策を取ることができますし、実際に米国では利下げを検討しているという話があり、中国では3月の全人代で企業に対する2兆元規模の税金や手数料の軽減策を打ち出しています。

結果がでるまでまだしばらく時間がかかりそうですが、米中間の協議の行方は世界経済に大きな影響を与えるため観察していきたいところです。


執筆者:渡邉亮

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