G20から透ける 日米の為替 への考え【海外】

海外

株式会社AWARDの渡邉です。4月14~15日にかけてG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が開催されました。その中で 日米の為替 に対する考え方が浮き彫りになる場面があり興味深かったためご紹介させて頂きます。

今回のG20では、前回と同様に世界経済の不安定な状態に対して各国ができる政策手段を総動員して安定化に努めるという内容とともに、パナマ文書を発端にした課税逃れの動きに対して対策を打っていく、といった内容が声明に盛り込まれました。これらは世界の共通認識ということで合意された部分になります。

前回のG20では通貨安競争は避けなければいけない、という声明が出されていました。しかし、今回麻生財務相は14日の日米財務相会談でルー米財務長官に円相場の偏った動きを懸念していることを伝えたそうです。1月から世界経済が不安定化し、全世界の株価が大きく落ち込んでましたが、最近はほとんどの国が持ち直しています。その中で日本だけが円高が進んでしまったことにより下落した株価が回復してきておりません。日銀のマイナス金利政策も円安株高といったアベノミクスを支えた2つの要素を立て直すことはできず、これ以上の円高は政府として対策が必要という考えがあったのでしょう。

ただ、このような麻生財務相の発言に対し、ルー米財務長官は15日の会見で円相場に触れ、円高が進んでいるものの市場の動きは秩序的である、といった発言をしました。日本が円高に対する為替介入などを検討していた中で、その目論見を否定する趣旨の発言であると捉えることができるでしょう。実は、米経済にとっては円高ドル安が進むのは決して悪いことではありません。日本と同じようにドル安が進めば輸出を中心とする産業は利益を出しやすくなりますし、インフレも推進されます。また新興国にとってもドル高が是正されていくのは経済にとって好ましいため、日本の都合だけでの為替介入は認められないことを示す意図があったのでしょう。

公表された内容だけ見ると、日本が欲しかった為替介入に対する米国の容認を得るのは困難そう、ということになるでしょう。安倍首相が通貨安競争は避けなければならない旨の発言をして大きく円高に動いた為替相場ですが、今回のG20をきっかけにまた円高方向に進んでいくかもしれません。円高は多くの日本企業にとっては苦しい条件であるため、ここからの株価の動きにも要注意です。


執筆者:渡邉亮

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