株式会社AWARDの渡邉です。
誰しもが人生の中で体験することになる相続。この『相続』ですが『争続』になってしまう例があるというのは聞いたことがありますか?最近相続問題のご相談を受けることが増えてきたのですが、しばしば相続人同士での争いが起きてしまっている例が見受けられます。
1.なぜ相続人同士での争いが起きる?
2.うまく相続をするためのポイント
3.遺言書作成のポイント
といった流れで相続についてまとめさせていただきます。
1.なぜ相続人同士での争いが起きる?
本来家族であるはずの相続人同士の争いはなぜ起きてしまうのでしょうか。
多くの場合、争いは遺産分割をきっかけとして起こってきます。一度争いが始まってしまうと、遺産分割が終わった後でも人間関係が元通りになることはほとんどありませんので、出来れば争いのないようにしたいものです。
『うちは資産家ではないから、争いが起こることはない』
と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には資産のあるなしと争続になってしまう可能性にはあまり関係がありません。寧ろ相続税がかかってくる資産家の方は事前に対策を講じていることも多く、相続の心配をしておらず準備をしていない方の場合のほうが争続に発展してしまうようです。
相続による遺産分割でなぜ争いが起きてしまうのか。こちらは相続をする側が持つ感情が大きく関わってくるようです。親からすれば同じように愛情を持って子ども達を育ててきたつもりでも、全く同じ世話をしたり学費を出してあげたりというのは難しいこともあり、どうしても差は出てしまいます。相続する側としては、他の兄弟姉妹に対して何らかの不公平感を持っていることも多く、その差を相続で埋めようとする傾向があるようです。
兄弟姉妹間の主張の違いというのは、どちらも間違っている訳ではないため対策は難しいものになります。例えば、
兄:自分は親と同居で介護をしたり長い期間親の為に尽くしてきた
弟:兄は苦労せずに自宅に住めるが自分は住宅ローンの支払いで苦労した
とういうような考えを兄弟間で持っているとしましょう。どちらの主張も間違っていませんよね。
最高裁判所の平成28年の「司法統計年報」によると、相続分割事件全体の中でも1000万円以下で争ってる件数が33%を占めているそうです。争続が起こるきっかけはお金だけでなく、多くはお互いの感情の問題であると言えます。
ではそのような争いが起こらないためにはいったい何をすれば良いのでしょうか。
2.スムーズに相続をするためのポイント
スムーズに相続をするためにはいくつかのポイントがあると言われています。
・生前から相続について関係者で話し合っておくこと
・相続される人(両親等)を中心に相続する人(子ども等)が納得するよう話し合いをまとめること
・遺言書を作成して話し合いの結果を法的根拠があるものとして残すこと
あたりが重要になってくるのではないでしょうか。
多くの場合相続についての話し合いは相続をする側からは切り出しにくいものになります。積極的に相続される側、つまり親の側などから話し合いの場を作るようにしていくべきでしょう。また相続をされる方がいなくなってからの話し合いになると、意見のまとめ役が不在になるケースも多いようです。出来るだけ相続が発生する前に皆が納得するような財産の分け方について決定しておくのが良いでしょう。
3.遺言書作成のポイント
そして話がまとまったら、その内容に基づいて法的根拠がある遺言書を作成しておくのが相応しいと思われます。遺言書を書く場合にもいくつか注意点がありますので箇条書きにさせて頂きますね。
・すべての財産を明記する
・包括遺贈は避ける
・遺留分に配慮する
例えば自宅を誰に渡すかだけを書いてある遺言書などですと、その他の財産をどのように分割するかが明確ではありません。現預金、株式、不動産など個別の財産について誰に遺すかを明記するのが良いでしょう。
また包括遺贈というのは、兄に2/3、弟に1/3の財産を遺す、などと全ての財産の分配のみを示すものになります。これもどの財産を誰が受け取るかで揉める可能性があります。また遺言書が絶対だと思っている方も多いのですが、法定相続人の方には遺留分という一定の財産を受け取る権利があります。こちらの割合を考慮せずに遺言書を作成した場合には後で争いになってしまうことも考えられます。
相続というのは大変デリケートなものですが、絶対に避けては通れないものでもあります。円満にその時を迎えられるかどうかは、普段からのお互いへの気遣いとコミュニケーション、そして準備が大切であると言えます。このコラムが、いつか来るその日のための話し合いを持つきっかけ等になりましたら嬉しく思います。