株式会社AWARDの渡邉です。
多くの方からご相談を頂く中で、住宅ローンの返済と投資はどちらを優先すべきか?聞かれることが良くあります。
この質問に対しては意見が割れるところですが、わたしは投資を優先すべき、と基本的には考えています。
1.繰り上げ返済の効果
2.投資と比較すると
3.金利上昇への対策
といった項目についてご紹介させていただきます。
1.繰り上げ返済の効果
投資をするよりも住宅ローンを先に返済すべき、とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。
これには実は理由があって、昔は住宅ローンの返済をすることが今よりもずっと効果的だったのです。
今と過去とでは金利が違います。32年前である1991年にはフラット35の金利が5.5%という時代がありました。それに対して現在は最低金利が1.7%程度になっています。つまり、過去の水準と比較すると、とても低い金利で住宅ローンを借りることが出来るということです。
金利が5.5%の場合と、金利が1.7%の場合で、繰り上げ返済の効果を比較してみます。残りの期間が30年、残債が3000万円あり100万円の繰上げ返済をした場合に、どのくらい総返済額が変わるかを見てみます。繰り上げ返済の方法は、返済額軽減型での比較です。
【金利が5.5%の場合】
総返済額6132万円⇒5928万円
100万円の繰上げ返済で204万円の返済額減少
【金利が1.7%の場合】
総返済額3832万円⇒3704万円
100万円の繰上げ返済で128万円の返済額減少
どうでしょう?まず金利が5.5%だと借りてる金額の2倍以上の総返済額になるのが驚きですよね。そして、金利が5.5%の時代ですと100万円の繰上げ返済により30年間で204万円も返済額が減るのに対して、金利が1.7%ですと128万円しか返済額が減りませんでした。
1.7%のローンでこの効果ですから、もっと金利が低いローンであれば、なおさら繰り上げ返済の効果は小さくなります。
2.投資と比較すると
こうした返済額の軽減効果は、投資と比較することができます。例えば100万円を投資したら、204万円総返済額が減るのであれば、30年間で100万円が204万円に投資で増えるのと同じ効果と言えるわけです。
30年間の複利で考えると、金利5.5%のローンの繰り上げ返済は2.4%、金利1.7%のローンの繰り上げ返済は0.8%で運用をしているのと同じ効果になります。
30年間確実に2.4%で運用できる金融商品というと株などの配当と比較しても悪くないように思えますが、0.8%ですとあまり旨みはないですよね。つまり低金利下の現在では、住宅ローンは借りたままの方がお得な可能性が高い、ということです。
3.金利上昇への対策
このように、現在の金利水準であれば繰り上げ返済より他の投資を優先した方が効率が良いです。
ただし、日本の金融政策を司る日銀は、現在金融政策の転換点を迎えつつあり、今後利上げが行われる可能性も高まってきていると言われています。
金利が上がればローンの支払い額も増えることになりますので、現在変動金利のローンを借りている方にとっては少し心配なところでもあるのではないでしょうか。
こうした金利が上がるときのためにできる対策としては、『手元の現金や流動性のある資産を増やしておくこと』です。
先ほど金利が低いローンを借りている場合は、繰り上げ返済の効果が薄いことをお伝えしましたが、金利が上がってきたら繰り上げ返済の効果は増すことになります。
返済額が上がっても支払いができ、金利の情勢に応じて繰り上げ返済ができる余力があれば、今後来るかもしれない金利の上昇局面でも問題ありません。
日々の貯金や積立投資などで、手元の流動資産を厚くしておきましょう。