株式会社AWARDの渡邉です。7月29日には日銀による金融政策決定会合の結果が発表されました。今回の政策の中身としては、
・マネタリーベースの増加目標(年間80兆円)の維持を決定
・ETFの保有残高の増加ペースを年3.3兆円から6兆円に引き上げ
・成長資金、米ドル特則の総枠を120億ドルから240億ドルに拡大
・当座預金の金利はマイナス0.100%で据え置き
等になりました。変化があったのは主に2つで、ETFの買い入れ額を2倍にしたことと、米ドル特則の総枠を2倍にしたことです。
ETFというのは上場投資信託のことを指しており、日銀が間接的に株を買うということになります。日銀が株の買い入れ枠を増やすということになれば、株の需給にとっては好材料ですね。ただ、金融緩和という観点から言うと株の買い入れ枠を増やすだけというのはどうなのか疑問には思います。株価が上がっても企業が資金調達しやすくなるくらいで、直接的なインフレ目標の達成に向けた効果は見込めないからです。
米ドル特則の総枠を2倍にしたというのは、日本の企業が外貨を調達しやすくする政策になります。しかし裏を返すと海外投資家から見た時には円の調達コストが上昇するということにもなります。日本企業の支援ではありますが、海外の投資家からすると決して嬉しい措置ではないかもしれませんね。
日本銀行は前年比2%の物価上昇目標を掲げています。これはつまりインフレ率を2%に引き上げるということです。目標達成の時期は「17年度中」とされており、これを達成するために各政策は行われています。そういう意味ではETFの買い入れ額の増加などは株価対策としては良いのかもしれませんが、直接インフレ率を高めることができるのかはちょっと疑問な政策です。
今回日銀では、「英国のEU離脱問題や、新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。」といった追加緩和の理由を出しています。しかし、足元の世界経済を見渡すと米国で過去最高の株価を達成するなど堅調な推移を見せています。実際7月26~27日に日銀金融政策決定会合に先立って行われたFOMC(米公開市場委員会)では「短期的な経済見通しへのリスクは低下した」という認識を明らかにしています。日銀とFOMCの世界経済に対する認識にズレが生じているようにも捉えられ、今後の日本市場が海外投資家の目からどのように映るのかには注目していきたいところです。