株式会社AWARDの渡邉です。
昨日は1日に2円の円安が進み、1ドル=129円台となりました。過去に129円台をつけたのは、2002年のこと。約20年ぶりの円安となりました。
2021年の初頭の為替レートは、1ドル=約103円。そのときと比べると円安の進行による円の価値の低下が著しいです。円安の原因を簡単にまとめておきましょう。
日米の金利差の拡大
まず、最初にあげられる要因は、日米の金利差の拡大です。米国が3月より利上げを開始しており、米国では金利が上昇しています。
皆さんはお金を預けたときに金利が3%つく通貨と、金利が全くつかない通貨だったら、どちらの通貨の方が好ましいですか?多くの方は金利がつく通貨と言うのではないでしょうか。金利差が広がれば米ドルの方が魅力的になるので、日本円が売られ米ドルが買われます。
これが円安の一つ目の要因です。今後も米国の利上げは続くので、一層の円安に対する圧力になるでしょう。
日銀の打ち手がない
2つ目の要因は日銀に打ち手がない点です。米国が金利を上げるのに対して、日本でも政策金利を上げて円安の進行を食い止める、というのは中央銀行である日銀が持っている手段です。しかし、それを今実行に移すのは難しい事情があります。
日銀は、政府の発行した長期国債を大量に保有しています。利上げをしてしまうと、これらの長期国債の価値が毀損し、日銀自体が資産よりも負債の方が多い債務超過に陥る可能性があるのです。中央銀行が債務超過となると、日本円の信用力は落ち、さらなる円安を招くことも考えられます。
また、利上げは低金利下に慣れた日本経済にも大きな痛手を与えます。変動金利の住宅ローンを借りている方は多いでしょうが、利上げとともに金利のコストは上がります。月々のローン返済の負荷に耐えられない方が出て、経済の混乱の発端になることも考えられます。こうした点を鑑みると、日銀は利上げに乗り出すのは難しい状況にあります。
日本の稼ぐ力の低下
3つ目の要因は、日本全体の稼ぐ力の低下です。財務省が2022年4月20日発表した、2021年度の貿易収支は2年ぶりに赤字となりました。また2022年1月には、経常収支が過去2番目の赤字幅となりました。
日本円の信頼性は、日本が対外的にお金を稼ぐ力があることによって支えられています。貿易赤字や経常赤字が慢性化すれば、日本経済への信頼性が低下し、円は売られやすくなります。
経常収支に関しては2月は黒字に戻りましたが、今後の流れは注視していくのが良さそうです。日本の強みは経済力ですから、そこが失われれば世界からみて魅力のない国になってしまいます。
円安はどこで止まるか?
さて、こうした円安になりやすい要因が複数重なりあって、現在の急激な円安は起こっていると言えます。銀行に日本円で眠っているお金も、皆さんが日本円でもらっている給料も、世界から見たらぐんぐん価値が低下しています。
既に一定程度の円安が進んだので、慌てて今まとめて外貨を買うのはどうだろうか、と思う面もありますが、少しずつでも日本円の比率を減らして外貨を購入していくのは生活の防衛に繋がるのではないでしょうか。
また、今は円安の流れになってきていますが、超長期で考えれば、1971年に1ドル=360円だったドル円が、時間をかけて円高になったとみることもできます。歴史的に見れば、1ドル=130円というのも、決して超円安というわけではないのです。
1ドル=130円で円安は一服する、といった根拠も特にありませんから、どういった状況になっても対処できるように備えておくことをお勧めいたします。