株式会社AWARDの渡邉です。
ファースト・リパブリック銀行が経営破綻
し、JPモルガンが買収をしました。
シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行に続き、米銀行の破綻としては今年に入って3行目となります。
1.ファースト・リパブリック銀行とJPモルガン
2.JPモルガンによる買収の流れ
3.市場全体への影響は
といった流れでご紹介させていただきます。
1.ファースト・リパブリック銀行とJPモルガン
ファースト・リパブリック銀行は、米国の大都市圏の顧客に、プライベートバンキング、不動産貸付、及びウェルスマネジメントサービスを含むサービスを提供している銀行でした。急激に成長していた銀行で、銀行の規模としては米国で14番目と、シリコンバレー銀行よりも大きい銀行でした。
しかし、富裕層や企業向けのビジネスで顧客数が少ない割りには大きな預金がされており、シリコンバレー銀行などの倒産の影響で預金が大手銀行やMMFに流出する流れが起きて、今回の倒産に至りました。
JPモルガンは、米国、ひいては世界で最大の銀行の一つです。CEOを務めるダイモン氏は世界中の銀行からの尊敬を集める人物であり、業界のリーダーと言える方となります。
JPモルガンはGlobal Systemically Important Banks(G-SIBs)と言われる「グローバルなシステム上重要な銀行」の筆頭でもあり、大きくて潰せない銀行の代表でもあります。
2.JPモルガンによる買収の流れ
ファーストリパブリック銀行の危機は、シリコンバレー銀行の危機のときから既に表には出てきていました。そんなファーストリパブリック銀行の危機を救うために、300億ドルの預金を大手銀行から注入するよう銀行団をまとめたのはダイモン氏でした。
今回のファーストリパブリック銀行の破綻にあたっては、各銀行から買収や再建に関しての提案があったようですが、ほぼ丸ごと引き受けるという提案ができたのはJPモルガンのみだったようです。
ファーストリパブリック銀行がFDICの管理下に入った状態で行われた緊急入札にて、JPモルガンは106億ドルをFDICに支払いファーストリパブリック銀行を買収することになったとのことです。
ちなみに一連の買収劇にあたってJPモルガンは26億ドルの一時利益を計上し、向こう1年半で20億ドルの関連再編コストを見込んでいるとのことです。総合的にJPモルガンにとっては良い取引であったと見なされているようで、株価も上昇しています。
3.市場全体への影響は
JPモルガンが丸ごと買収をしてくれたことで、ファーストリパブリック銀行の破綻による市場への影響は小さく抑えられたと言えます。
一方で潰せない銀行であるG-SIBsの筆頭であるJPモルガンがさらに巨大になる取引でもあったため、金融当局にとっては悩ましい面もあったと思われます。従来JPモルガンは巨大すぎるため、買収を通じたこれ以上の預金拡大は認められないとされていました。
『大きすぎて潰せない、大きすぎて救えない』という超巨大な銀行がさらに巨大化した、ということで、将来のリスクは増大した一面もあると言えそうです。
4.まとめ
2008年のリーマンショック以降で最大の米銀の破綻となったファーストリパブリック銀行の破綻。業界トップのJPモルガンによる買収で一時的には影響を最小限に食い止められたと言えます。
一方で巨大な銀行がさらに大きくなるという結果をもたらしたため、将来的なリスクは増大した一面もあります。
まだ米国の銀行の危機は完全に収まっているわけではありません。FRBの利上げと対応次第で破綻する銀行は他にも出てくる可能性がありますので、市場動向には注意しておきましょう。