株式会社AWARDの渡邉です。
破綻が報じられたシリコンバレー銀行(SVB)。その預金の95%は米国の預金保護制度の対象外であり、大口の預金者であったスタートアップ企業では、あと少しで給与の支払いが行えない、取引の支払いができないなど多大な影響が出るところでした。
しかし、そんなSVBの預金が米国当局によって全額保護されることが決定されました。この決定で、当座の金融危機は回避することが出来たと言えます。
1.SVBの預金を全額保護してくれたのは?
2.全額保護の長期的な問題点
3.現在の相場に対しての見方
という項目にわけてご紹介させていただきます。
1.SVBの預金を全額保護してくれたのは?
SVBの預金が全額保護されるのは、米財務省とFRB、FDIC(米連邦預金保険公社)が共同で出した声明により明らかになりました。この声明が出たのは米東部時間3月12日(日)の18:15。日曜の夜に政府機関から声明がでる、というのがどれだけ緊急の対応だったかを良く表しています。
なお声明が発表されたタイミングは日本ですと3月13日(月)7:15というタイミングでした。このタイミングまでの間に、先週1ドル=137円前後だったドル円の為替レートは、1ドル=134円円前後まで下落し、全面的なドル安の展開となっていました。
しかし、預金の全額保護が報じられて、急激にドル円の為替レートは1ドル=135円まで戻すことになりました。市場に対して与えた安心感はかなりのものだったとリアルタイムで見ていて感じました。
東京で株式市場が開く前に声明を発表したい、という米国当局の思惑もあったかもしれませんね。
2.全額保護の長期的な問題点
さて、政府が全額預金を保護してくれた、というのは喜ばしいことです。確かに短期的にはその通りなのですが、長期的に考えるとモラルハザードが大きな課題になります。
モラルハザードとは、起こりうる最悪な事態から免れる為の対応策を備えた事で、かえって注意する意識が軽薄化し、結果として危険な事態を招いたり、倫理感の欠如、規律が失われる状態になることを指します。
今回、SVBは多数ある銀行の中でも特に大きなリスクを負った資産運用を行い、金利の上昇や預金の引き出しに耐えうる財務体質にしていなかった、という固有の問題で破綻にまで追い込まれました。
つまり、こうした運営が不健全な銀行の預金を保護することで、
・稼げるときは稼げるだけリスクを負って経営者も報酬を貰えばよい
・最悪のケースは政府が保護してくれる
というような考え方を銀行に持たせることにもなり兼ねないわけです。
SVBの経営陣には、2008年にリーマンショックを引き起こしたリーマンブラザーズの最高財務責任者の名前が含まれていましたし、SVBの経営陣が経営状況の公開前に株式を売却したりといった倫理的・法的な問題行為もあったようです。
こうした動きを許すことになれば、銀行の規律が崩れ、さらなる大きな問題に長期的には発展してしまうこともあり得る、と言えます。
3.現在の相場に対しての見方
とはいえ、短期的に相場を落ち着かせるためには、預金の全額保護、というのは米国当局の英断でした。この後は、モラルハザードが起きないように、そして今回のような銀行の破綻が起きないように財務の規律や監視をより強く求めるような流れになるのではないでしょうか。
実際に米国のバイデン大統領は、銀行システムの規制強化を議会に求めていく考えを示しています。今回の破綻の責任を明確化させるとも表明しているため、米国としてモラルハザードを防ぐために動いていくのでしょう。
こうした急展開を受けて、現在の株式市場は、
・インフレへの対応としての利上げ
・金融システムを守るための利下げ
という2つのはざまで揺れることになります。このコラムを書いている3月14日の夜には米CPIが発表されますので、そこでも市場に対する風向きが変わるでしょう。
現在は不確実性で市場が揺れています。こんなときには、一部の銘柄に投資チャンスが眠っているものです。そんなチャンスを様々な材料から探ってみるのも投資の醍醐味と言えるのではないでしょうか。