個人向けの楽天社債は買いか?

資産運用

株式会社AWARDの渡邉です。

楽天グループ(4755)が個人投資家向けに2年債(愛称は楽天モバイル債)の発行を準備しているとのことです。発行総額は2500億円で利率は年2.00~4.00%の範囲内で1月27日正式な条件が決定されるとのことです。

仮に年利4.00%で決定すれば、2年間で税引前の利子が8.00%も貰えることになります。では、この債券はお買い得なのでしょうか?

1.債券の利子の決まり方

2.海外で発行された楽天の社債

3.ドル建てと円建ての差をどう見る?

と言った流れでご紹介させていただきます。

1.債券の利子の決まり方


債券というのは、国や会社が発行する、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。簡単に言えば、お金を貸してください、その代わりに債券を発行するので、持っていただいたら利子を払いますよ、といった商品ですね。

基本的には毎年利子がつき、満期には額面の金額が戻ってくるという商品なため、株式と比べると安全性が高い、とされています。

ただし、発行体が利子や元本を払えなくなる、というリスクもあるため、発行体の信用度に合わせて利率が変わります。また、長期の債券であればあるほどリスクは高まるため、期間が長期なほど利率は高くなるのが一般的です。

2.海外で発行された楽天の社債


今回、楽天が個人投資家向けに発行する2年債は最大で金利が4.00%です。

ただ、この社債の購入を検討する場合には、1ヵ月半前に発行されたドル建ての社債のことも知っておくと良いでしょう。楽天は2022年11月30日に海外でドル建ての社債を発行しています。

年限2年のディスカウント債(額面よりも低い価格で発行される債券)で、発行額は5億ドル(約700億円)。

利率は年10.250%で、割引分を加味した最終的な利回りは12%にも上りました。

つまり、日本円建てで利率4%と、ドル建てで利率12%だったら、どちらの方が有利か?ということは考えた方が良さそうですよね。また、12%も金利をつけないと、投資家から購入されない信用度の社債であった、という点も考慮に入れた方が良いかもしれません。

3.ドル建てと円建ての差をどう見る?


とはいえ、円建ての社債とドル建ての社債を利率だけで比較するのはフェアではありません。ここでは日米の金利差に着目してみましょう。

金利差を見る上で、リスクフリーレートと呼ばれる10年国債の利回りを基準にする考え方があります。2023年1月9日時点(ブルームバーグ参照)で、

日本国債10年利回り:0.49%

米国債10年利回り:3.53%

となっていました。その差は約3%になります。ちなみに楽天社債の期間に合わせて2年債同士で比較すると、

日本国債2年利回り:0.01%

米国債2年利回り:4.20%

となっており、その差は約4%でした。

ここからは、現在の市場環境だと米ドル建ての商品の方が3~4%金利が高いと見なせることがわかります。

これで修正すると米ドル建てで12%の社債は、日本円建てであれば、8~9%程度の利子がつく社債だと考えることができます。

やはり、日本で個人投資家向けに販売される利率2.00~4.00%の社債はドル建てで発行されたものに比べると見劣りしてしまいますね。

まとめ


今回は楽天の社債を例にとって、債券の性質、円建てとドル建ての商品をどう比べたら良いか、といったことについてもご紹介させていただきました。

結論から言えば、楽天の日本円建てで発行される社債は、決して良い条件ではありません。ただし、ドル建ての社債が発行されたのは1ヵ月半前のことでしたし、情報と資金量と行動力がなければアクセスするのは難しかったと思います。

その点も加味すれば、すぐ買える円建ての2.00~4.00%の債券が、楽天の信用力を考慮した上で買いである、と判断できる方は購入しても良いのではないでしょうか。

金融の世界には、情報の差でリターンが変わる事例がたくさんあります。ぜひ知識を武器に成果をあげていきましょう。


執筆者:渡邉亮

こちらのコラムは日々金融情報に触れて頂きたいという想いから継続して配信しています。あなたにとって大切な方にぜひご紹介ください。

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