株式会社AWARDの渡邉です。
9月22日に財務相が実施を決めて実行に移された為替介入。ドル売り円買いの介入は約24年ぶりの出来事でした。極端に進んできたドル高円安に対して、為替介入はどのような効果をもたらしたのか?
本日はそんな点についてまとめたいと思います。
1.為替介入当日の効果
2.1週間経過しての評価
3.経済のブレーキとアクセル
といった流れでご紹介させていただきます。
1.為替介入当日の効果
9月22日に行われた為替介入により、当日の為替レートは乱高下しました。当日のドル円の為替の始値、高値、安値、終値を見ると、
始値:1ドル=144.04円
高値:1ドル=145.89円
安値:1ドル=140.34円
終値:1ドル=142.35円
と1日のうちに1ドルの価値が約5.55円も変動したことになります。急激な為替変動を防ぐ、というのが今回の為替介入の名目でしたが、実際には介入によって激しい乱高下となったのは皮肉に感じられます。
2.1週間経過しての評価
為替介入が行われてから、約1週間。その評価は様々なものがあるようです。
当然のことながら政府筋、日銀などは為替介入に対して肯定的なコメントを出しています。日銀の黒田総裁も『為替介入は、為替相場の過度な変動に対する必要な対応で適切』といった旨の発言を記者会見にて行っています。
一方で今回の為替介入を無駄なものと評価する有識者もいます。
為替介入が行われた9月22日は、日銀が金融政策決定会合を行い、現在の金融緩和政策の維持に対して強い意思を見せた日でもありました。日銀の金融政策決定会合を受けて、さらなる円安が進んだタイミングだったわけです。
そして、まさにその日に財務省は円買い介入を行ったのです。金融緩和策の維持を金融政策のアクセルとするならば、ドル売り円買いの為替介入はブレーキであるとも言えます。
つまり、アクセルを踏みながら、ブレーキを踏むような矛盾した行為を日銀と政府がしたという批判があるのです。
なお、1ドル=145円を超えたところで為替介入が行われたことで、現在の市場ではそのラインが強く意識されるようになってきていますが、為替レートはほぼ介入前の水準にまで戻しています。
3.経済のブレーキとアクセル
今回の円買い介入はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる行為だ、という批判があることをお伝えしましたが、改めて経済におけるブレーキとアクセルについて考えてみましょう。
【経済のブレーキ】
・利上げ
・QT(量的引き締め)
・増税
【経済のアクセル】
・利下げ
・QE(量的緩和)
・減税
等が代表的なものとしては挙げられます。米国は利上げをし、QT(量的引き締め)を実施しています。これは過度なインフレを抑え込むためです。
一方で日本はマイナス金利政策を継続し、QE(量的緩和)を継続しています。この政策の違いが今回のようなドル高円安を生んでいます。
新型コロナウイルスの感染拡大とともに、世界中で金融緩和が行われ、景気の過熱が起こりました。またロシアによるウクライナへの侵攻もあり、世界的に厳しいインフレに見舞われている国が多くなっています。
こうした混乱の中、日本に限らず矛盾した政策を行う国は出てきています。イギリスは利上げをして経済の過熱にブレーキをかけたところに、減税というアクセルを踏むことを決定しました。この減税の発表を受けて、英国の財務状況の悪化懸念から、英国の通貨であるポンドや英国の株式は大いに売り込まれました。
世界各国、経済の舵取りに頭を悩ましているようです。引き続き市場の様子を観察していきましょう。