2022年上期は貿易赤字過去最大

資産運用

株式会社AWARDの渡邉です。

日本といえば貿易で稼いできた国、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかし、そうした構造は今崩れつつあります。2022年上期は貿易赤字が過去最大になったとのことです。今回は、

・2022年上期の貿易赤字について

・過去の貿易収支の推移

・今後の展望

について解説していきたいと思います。

2022年上期の貿易赤字について


2022年1-6月の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が7兆9000億円あまりの赤字となりました。これは半年間では過去最大の赤字額となります。

赤字の原因はいったい何だったのでしょうか。この原因は主に2つに分けられます。

まず第1に、資源価格や食料価格の高騰です。原油や石炭、天然ガスなどエネルギー関連の品目の価格が大幅に値上がりし、輸入額が大きく膨らみました。原油の輸出国であるロシアがウクライナに侵攻したことで、世界中でエネルギーの流通に変化があったことも大きな要因となっています。

そして第2に円安が進んだことが挙げられます。日本の企業の多くが輸入品の支払いをドルで行いますが、貿易統計ではこれを円に換算することになります。円安の状態では自ずから円ベースの輸入額が押し上げられることになるわけです。なお、今年の後半は企業が準備していた為替予約(あらかじめ外貨を決められたレートで交換できる契約)がなくなってくるため、貿易赤字額はさらに増える可能性が高いです。

過去の貿易収支の推移


現状、貿易赤字の状態は長らく続きそうな様相を見せています。しかし、過去には日本は長期に渡って貿易黒字国でした。

1980年頃から2010年頃まで、日本では貿易黒字がずっと続いていました。2011年に31年ぶりの貿易赤字を経験しているのですが、ここで貿易赤字になったのも、東日本大震災に伴う福島第一原発の原発の事故により、エネルギーの輸入が増加したことが要因になっています。日本は資源国ではないため、資源の輸入額が増えることは貿易赤字に繋がりやすい構造になっているのです。

2011年以降の日本では頻繁に貿易赤字になっています。貿易黒字が常態な国ではすでになくなっている、ということですね。そんな中で2022年上期は過去最大の貿易赤字になった、ということです。

今後の展望


岸田文雄首相は、参院選を終えた後の2022年7月14日に、冬の電力の安定確保のため最大9基の原発稼働を進めるよう経済産業相に指示したと記者会見で発表しました。

原発の再稼働はエネルギーを自国で作ることに繋がるため、貿易赤字の圧縮には効果を発揮する可能性があります。過去の貿易赤字の推移を見ても、原発の稼働は一つのポイントになると言えます。

また、現在は20年以上ぶりの円安になっています。これは日本の輸出企業にとっては、外貨を稼ぎやすいかなり有利な状況です。日本企業は景気が良いときには比較的輸出で外貨を稼ぐことができる傾向があります。

現在の円安が続き、なおかつ世界経済が一定水準の好調を維持できるようであれば、日本の貿易赤字は縮小の傾向に向かうかもしれませんね。

しばらく貿易赤字は常態化するかもしれませんが、エネルギー戦略や日本企業の輸出力によって変化は起こりえます。このあたりをチェックしていきましょう。


執筆者:渡邉亮

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