株式会社AWARDの渡邉です。
ロシアによるウクライナ侵攻が続いています。
アメリカ、イギリス、EUは、ロシアに対して前例のない金融制裁を実行しており、国際企業も次々とロシアから撤退しています。
ロシアの国民にとっても今回の侵攻は多大な影響を及ぼしており、2月には1ルーブル=1.5円ほどでしたが、その価値は3月には半減しています。
ロシア国債のデフォルトは早ければ明日にも始まるという話もあります。
そんな中で思い起こされるのは、20世紀末のロシア財政危機です。そのときに破綻したLTCM(Long Term Capital Management)について、今回はご紹介したいと思います。
LTCMとは
LTCMとは、「Long Term Capital Management(ロングターム・キャピタル・マネジメント)」の略で、ソロモン・ブラザーズで活躍したトレーダーのジョン・メリウェザーの発案により設立されました。
1994年に運用を開始し、その取締役会の中には、1997年にノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンといった著名人が加わっており、世界各国の金融機関や機関投資家、富裕層などから巨額の資金を集めました。
実際に運用を開始してから数年間は、年間の平均の利回りが40%を突破するなど素晴らしい成績を上げ、最盛期には1000億米ドルを運用するまで規模を拡大させました。
アジア通貨危機とロシア財政危機
しかし、そんなLTCMですが、1997年に発生したアジア通貨危機と、その煽りを受けて1998年に発生したロシア財政危機で状況は一変します。
LTCMは、アジア通貨危機とロシア財政危機によって発生した新興国に対するマーケットの動揺は短期間に収束すると予測して、それに応じた巨額のポジションをとっていました。
具体的には、市場価値が理論価格より安いロシア国債などを買い、市場価値が理論価格よりも高い米国国債などを空売りし、各々の市場価格が理論価格へ戻るまで待っていたのです。
しかし、そんな目論見は外れ、市場の動揺は収まらず、LTCMは破綻することになりました。ちなみにLTCMはロシア国債が債務不履行を起こす確率は100万年に3回と見積もっていたそうですが、それは実際に起こってしまいました。
その後はどうなったか?
こうしてLTCMの運用は破綻してしまったわけですが、その規模が巨大だったこともあり、銀行などから救済融資を受けつつ、精算することになりました。スーパースターたちにより運営されたヘッジファンドも失敗することがある、というのは教訓になるかと思います。
現在ロシアは債務不履行の危機を迎えており、1998年のロシア財政危機を思い返させる状況にあります。ロシアによるウクライナ侵攻を予想していた機関投資家やヘッジファンドは多くないでしょうから、LTCMのように破綻するようなファンドも現れるかもしれません。そして、一つのファンドの破綻は、他の金融機関が関わっていた場合には大きな波紋を生む可能性もあります。金融市場にはまだまだ慎重に向き合う必要があるでしょう。
ちなみに、LTCMの話でもう一つ付け加えたいのは、LTCMの発案者であるジョン・メリウェザーは、LTCMの破綻後にJWMパートナーズというヘッジファンドを立ち上げていることです。2007年頃には円を絡めた為替取引で大きな利益を上げています。しかし、その後の世界金融危機でまたもや巨額な損失を出し、JWMパートナーズも閉鎖されました。
そして、それでもまだへこたれずに、ジョン・メリウェザーはJM Advisors Managementという3度目のヘッジファンドを立ち上げています。そのあくなき探求心とへこたれない姿勢からは学べるものがあると感じます。
ぜひ歴史を学び、今の行動に活かしていただければと思います。