株式会社AWARDの渡邉です。
皆さんはスタグフレーションという言葉を聞いたことがありますか?聞き慣れない言葉かもしれませんが、来年以降の世界がどう変化していくかを考える上で押さえておきたい言葉であり現象となります。
本日はスタグフレーションについて取り上げます。
スタグフレーションの意味
スタグフレーションとは「stagnation(停滞)」と「inflation(物価上昇)」を掛け合わせた造語です。景気後退で失業率も高くて給料も上がらない中で、物価が上昇していく状態を意味しています。
通常、景気が悪くなれば消費が落ち込み需要が減ることで物価も下落します。これは日本が2000年前後に経験した「deflation(物価下落)」です。
しかし、スタグフレーションの場合は、景気が悪く給料も上がらないのに物価が上昇してしまうので、生活は一気に苦しくなります。今後、急激なインフレによりこのスタグフレーションが起きてしまうのでは、というのが世界中で懸念されてきています。
過去のスタグフレーションの事例
スタグフレーションという言葉が生まれたのは、1960年代末から1970年代におけるイギリスです。当時のイギリスはインフレと失業が深刻な問題になっており、政治家が自国の経済を表現する際に、スタグフレーションという言葉を使ったそうです。
また、世界的には1979年の第2次オイルショックにより、スタグフレーションが深刻化しました。オイルショックによって米国のインフレ率などは15%前後まで上昇しましたが、失業率の低下も同時に起こり景気の低迷が起こりました。
スタグフレーションは一度起こるとコントロールするのが非常に難しいとされています。通常の景気の停滞であれば金融緩和でインフレを誘導して景気を刺激することができますが、スタグフレーションではすでにインフレは起こっているわけですので、物価の急騰を招いてしまう可能性があるため有効な対策が打ちづらくなります。
来年以降の物価と景気に着目
現在、スタグフレーションの懸念が高まっているのは、世界中で起こっているインフレに加えて、来年にも米国の利上げが始まる可能性が高いためです。
12月24日に日本で11月の全国消費者物価指数が発表されましたが、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.5%の上昇となりました。上昇は3カ月連続で、上昇幅は2020年2月(0.6%上昇)以来1年9カ月ぶりの高さとなっています。
なお、携帯電話の値下げのみで消費者物価指数全体を1.5%ほど押し下げる効果があったと言われており、仮に携帯電話の値下げがなかったとしたら、すでに物価の上昇率は2.0%に達していることになります。
日本では長きに渡って賃金の上昇が停滞していますが、仮に賃金の上昇が止まったまま、物価が上昇していくとするとスタグフレーションの危機となるでしょう。来年以降の企業の賃上げや物価の上昇には十分に注意しておく必要がありそうです。