株式会社AWARDの渡邉です。
投資の世界で過去のリターンを調べるのは、やり方さえわかっていれば比較的容易です。最近でしたら、Googleですこし検索するだけでも過去のチャートや、様々な市場の過去リターンをまとめたものが出てきます。
しかし、未来のこととなるとどうでしょうか。多くの方は今後の投資の成績を過去のデータを当てはめてシミュレーションしますが、過去と現在とでは置かれた状況が違うわけです。それらも考慮された未来の市場予測があるとありがたいですよね。
今回は外資系金融機関が出している貴重な将来の予測についてご紹介させていただきます。
JPモルガン将来予測
JPモルガン・チェースと言えば、アメリカに本社を置く超巨大な銀行持株会社です。S&P500といった米国を代表する株価指数の構成銘柄上位10社にも名前を見かけることのある会社で、時価総額は日本円にして約50兆円ほどになります。
そんなJPモルガン・チェースの資産運用部門を担う、JPモルガン・アセット・マネジメントは、毎年10~15年先のリスク・リターン予測と、約60資産の期待リターンについてのレポートを発表してくれています。それが「Long-term Capital Market Assumptions」(以下、LTCMA)です。
こちらの最新版にあたる2022年版が12月16日に発表されておりました。主要な資産についての今後の期待リターンをJPモルガンがどう予想しているのか、というのは投資家としてはかなり参考になるのではないでしょうか。
日本円建ての予想リターンは?
では、早速ですが代表的な資産について、期待されるリターンをチェックしてみましょう。2021年9月30日時点でのデータを用いて予想はされており、()内で昨年の数値もご紹介しています。
世界株式 為替ヘッジなし:3.30%(3.70%)
米国大型株式 為替ヘッジなし:2.40%(2.70%)
日本大型株式:5.00%(5.10%)
先進国株式 為替ヘッジなし:3.10%(3.50%)
新興国株式 為替ヘッジなし:5.20%(5.80%)
となっていました。いかがでしょうか。米国の期待リターンの低さに驚いた方も多いのではないでしょうか。
過去の米国の株式市場では30年間の平均で10%程度のリターンを出してきましたが、今後の期待リターンはそれほど高くないとJPモルガンは見ているわけですね。
将来のリターンを先取りすると?
こうした予測を見ても、もっと高いリターンが得られるはず、という方もいるでしょう。もちろん未来を完全に予測することなど誰にもできませんので、実際に10~15年後にどのような状況になっているかはわかりません。
しかし、知っておきたいのは、株式市場でリターンを先取りすると、未来のリターンは少なくなるということです。株式の価値というのは本質的には企業の出す利益や企業の中にある資産の額によって決まります。つまり株式の本質的な価値が上がるためには、
・将来出す利益が増えること
・将来企業の中にあるお金が増えること
などが必要なわけです。こうした点が変わっていないのに株価が上がっている状態というのは、本質的な価値に対して資産が割高になっている可能性があります。
もし、企業の本質的な価値が変わってないのに、今株価が上昇して株式から得られるリターンを先に取ってしまったとしたら、将来得られる利益は減ってしまうと思いませんか?JPモルガンの予想の中で将来の期待リターンが低く評価されている資産は、もしかしたら足元でリターンをかなり先取りしてしまっているのかもしれません。
将来の完璧な予測は誰にもできませんが、超巨大な外資系金融機関が出しているこうした市場予測を私たちもチェックできるというのは貴重です。ぜひ投資の戦略作りに活かしていただければと思います。