量的緩和終了前倒し

資産運用

株式会社AWARDの渡邉です。

米国の金融緩和が前倒しして終了することが、本日未明に発表されました。金融緩和終了に向けて金融政策が急激に変化していることになります。

経済等に与える影響についてご紹介していきます。

12月FOMC


米連邦準備理事会(FRB)は15、14日にかけて行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)を加速することを決定しました。11月に行われたFOMCでテーパリング開始を決定し、終了時期の想定は2022年6月とされておりましたが、今回のFOMCでは終了時期を3月へ前倒しすることが決定しています。

たった1ヵ月の間に状況が変化したのは一体なぜなのでしょうか?それは消費者物価指数を始めとして、米国に激しいインフレの兆候が見られだしたから、というのが最も大きい要因でしょう。10月の消費者物価指数の前年同月比は+6.2%、11月は+6.8%でした。米国を中心として急激なインフレが起こり始めており、量的緩和終了を早めることでこのインフレを抑えたい意図があると考えられます。

利上げは来年3回か


量的緩和が終了すれば、次は利上げによる金融の引き締めが行われることになります。今回のFOMCでは正副議長や理事、地区連銀総裁ら参加者18人がそれぞれ中期の経済・政策見通しを提示しました。

その予想の中央値を見ると、2022年中にゼロ金利を解除した上で、計3回利上げするという予想が中央値となっています。前回9月時点では2022年の利上げの回数の予想は(0.5回)でしたから、金融引き締めを急ぐ姿勢に傾いているのがわかります。

オミクロン株など経済の不確定要因に備えた上で、インフレもコントロールしていくという難しい舵取りを迫られているFRBですが、今は引き締めを急ぐ方向に舵を切っているということですね。

市場への影響は?


さて、こうした金融引き締めは金融市場にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?株式、債券、ビットコイン、金などについて一般的に考えられることを書いてみます。

株式…インフレは株式にとってプラス要因ですが、金融の引き締めや利上げは将来の利益に期待されて大きな株価がついているグロース株にとってマイナス要因です。一方で利上げは銀行など金融株の業績の押し上げには直接的に作用します。

債券…利上げによって市場の金利が上がると、既存で発行されている債券の価格は下がります。金利の上昇とともに、長期債のETFなどに関しては価格下落の圧力を受けることになるでしょう。

ビットコイン…金融緩和であふれたマネーが向かった先がビットコインを始めとする仮想通貨(暗号資産)だったと考えると、金融緩和が終了に向かえば価格にとってマイナス要因です。ただし、世界的な需要が金融の引き締めペース以上に強まれば価格は上がります。

金…モノである金はインフレとともに価格が上がります。ただし、市場の金利が高くなれば金利のつかない金よりも債券などの方が魅力的と考える方は増えるでしょうから、利上げなどは価格の下落要因になります。

といった感じでしょうか。インフレと金融引き締めの綱引きは今後の各資産の価格に影響を及ぼしていきます。なお、今回のFOMCの通過により米国の株価などはすこし反発しています。金融引き締めの加速ペースが予想されていた程度のものであり、市場との対話ができている状態である、ということになります。

引き続き来年も米国の金融当局の政策転換には注意していきましょう。


執筆者:渡邉亮

こちらのコラムは日々金融情報に触れて頂きたいという想いから継続して配信しています。あなたにとって大切な方にぜひご紹介ください。

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