株式会社AWARDの渡邉です。
選挙を控えている中で、自民党の麻生さんから、
「年金増えたのは、運用を株でやったおかげでしょうが」
といった発言があったそうです。実際のところ、年金は株で運用をすることによって増えたのでしょうか?本日はこの発言について読み解いていきたいと思います。
麻生さんの発言内容
横浜の街頭演説で麻生さんが話していたのは、
・2012年、野田政権が「解散する」と言った時から日本の株価は2万円あがった
・年金は80兆円増えている
・年金が増えているのは運用を株でやったおかげ
といった趣旨の内容のようです。こちらの真偽についてまず見てみたいと思います。
この麻生さんの言うところの年金というのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している年金積立金のことを指しているのでしょう。また日本の株価、というのは日経平均株価のことですね。
2012年当時の民主党の野田首相が解散を宣言したのは、2012年11月14日午後の党首討論で、11月16日に衆院解散に踏み切る意向を表明しました。
当時の記事より2012年11月14日の日経平均株価の終値を見てみると、
となっていました。ちなみに麻生さんの発言があった2021年10月23日の前日の日経平均株価の終値は、
28,804円85銭
その差は20,000円以上ですから、麻生さんの発言の株価の部分に関しては、まず事実だと言えそうです。
年金が80兆円増えている?
さて、それでは年金が80兆円増えている、の部分についてはどうでしょうか?2012年当時のGPIFの資料を見てみると、2012年12月末時点でのGPIFの資産額は、
でした。これに対して2021年6月末時点でのGPIFの資産額を見てみると、
となっています。この金額も80兆円弱増えていますね。ただ、GPIFに関しては資金の流出入も考慮する必要がありますが、概ね将来のための年金の原資が80兆円ほど増えているのは間違いないのではないでしょうか。
儲けることはできてない?
さて、ではこうした麻生さんの発言に対する批判を見てみたいと思います。例えば2チャンネルの創設者のひろゆきさんは、
・株は売って利益を確定させて初めて『儲けた』と言える
・他の人が買わないモノを買い続けてる
といったことをTwitterで書かれていました。実際のところ株式は売却して初めて利益確定と言えるのは事実かと思います。しかし、それは運用をしている限りはすべての資産について同じ扱いとなってしまいます。債券であっても売却しなければ現金として利用することはできませんし、値動きはあるものですからね。
また他の人が買わないモノを買い続けている、というのはGPIFが日本株を大量に保有しているために出た言葉でしょうが、他の人が買わないモノには値段がつかないことを考えると、ちょっとズレている発言かもしれませんね。
株式というのは買う人と売る人が合意した価格で市場が形成されています。買う人がいるから、現在の評価額があるわけです。GPIF以外にも日本株を購入するプレイヤーがいることを考えると、この指摘は当てはまらないかと思います。
ちなみに、別の批判として、年金が増えているといっても支給額が増えていない、という意見もネット上で見受けられました。これは全くもって事実で、GPIFの運用する資金は年金制度を長く継続させるための原資となる資金です。残念ながら、運用が上手くいったからといって、今の年金支給額が増えるわけではないのは知っておきましょう。
著名人の発言というのも鵜呑みにせずに、真偽を自分なりに考えてみるのは良いことかと思います。一つの事象に対しても解釈は無数にあるので、ぜひご自身なりの解釈を見つけてみてください。