ビッグモーター事件について

保険

株式会社AWARDの渡邉です。

ビッグモーター事件について

今回は取り上げます。

中古車・整備の大手、ビッグモーターで損害保険会社も巻き込んだ大きな不正があり、ニュースをにぎわしています。

いったい何が起こったのか。まだ追加の報道がどんどん出てきている中ではありますが、現状でわかっている範囲で事件を解説させていただきたいと思います。

1.ビッグモーター事件の概要


ビッグモーターは年商7000億円の中古車・整備会社となります。

年商7000億円というとTOTOや、サイバーエージェントや、野村不動産と同等の規模になりますが、上場はしていない会社です。

創業者が一代で築き上げた会社で、株式はすべて資産管理会社であるビッグアセットという会社が保有しているとのことです。この資産管理会社は創業者である兼重一族の会社ですから、実質的にビッグモーターの経営権はすべて創業者一族が保有している、ということになります。

今回の事件の趣旨は、

『整備のために顧客から預かった車に対して、故意に傷をつけるなどして保険金を不正に請求した』

といった内容になります。保険会社に対しての金銭を詐取するための不正請求になりますから、強い言葉で表現すれば、会社ぐるみで保険金詐欺をしていたという事もできるでしょう。

ここではビッグモーターという会社が、

・顧客を騙し、顧客の車を故意に傷つけて商売をしていた

・保険会社を騙し、保険金を詐取していた

という2点が大きな問題となります。

2.保険会社もグルだった?


さて、先ほど挙げた2つ目の問題に関しての追求が進むにつれ、さらに明らかになってきたことがあります。それは、保険会社自体の関与です。

ビッグモーターは車の修理と整備だけでなく、自動車保険を販売しており、大手損害保険会社の代理店でもありました。

損害保険会社にとっては、ビッグモーター自体が、保険の契約をあげてくれるビジネスパートナーでもあったのです。

・東京海上日動

・損害保険ジャパン

・三井住友海上

・あいおいニッセイ同和

など大手4社はみなビッグモーターに代理店をやってもらっており、その取扱高は合計で200億円規模だったとのことです。中でも、損保ジャパンのシェアが圧倒的に高く、その収入保険料は120億円に上っています。実は、損害保険ジャパンは、2011年以降、ビッグモーターに対して計37人の出向者を出しており、ビッグモーターとはとりわけ深い関係にありました。

この出向者を通じて、昨夏の時点で、「工場長から不正の指示があった」との情報を損保ジャパンは得ていたとのことですが、自主的な調査を行った上で一度は止めていたビッグモーターとの取引を再開していました。

本来、損害保険会社はビッグモーターの不正請求によって損をする立場です。しかし、損保ジャパンはビッグモーターから顧客の斡旋も受けており、トータルで考えると得をする仕組みができていたと見られます。

損害保険はトータルの事故率などから私たちの支払う保険料が決まります。こうした不正が行われていたことで、ビッグモーターとは直接的な関りがない方々の損害保険会社に支払う保険料が割高になっていた可能性も考えられます。こう考えるとより社会全体に影響を与える大きな問題というのが明らかになってきますよね。

3.ビッグモーターの対応


これら一連の報道を受けて、

・社長(父)と副社長(息子)の2名が役員を辞任する

ことを発表しています。

しかし、株式会社ビッグモーターの株式(所有権)を100%持つ資産管理会社ビッグアセットは引き続き兼重ファミリーが持ち続けるとのことです。

株式は経営権を分割したものですから、実質的にはビッグモーターの経営権は兼重ファミリーが持ち続けるということになります。

また、今回の不正を受けてビッグモーターは倒産する可能性もあります。仮にビッグモーターが倒産すれば、その株式の価値はなくなりますが、ビッグアセットに残ったお金は別会社になるので守られることになります。

損害保険会社の仕組み、株式会社の仕組みも含めて事件の全貌を見ると、さらに色々と見えてくる部分があるのではないでしょうか。

4.まとめ


ビッグモーターの事件について今回はまとめてみました。顧客の車を故意に傷つけての保険金の不正請求に留まらず、社会全体に及ぼす影響は大きい事件と言えます。

他にも敷地外の街路樹を故意に枯らしていた可能性があることや、労働上の問題なども明るみに出てきています。

この事件がどういった結末を迎えるのか、報道を追っていきたいと思います。


執筆者:渡邉亮

こちらのコラムは日々金融情報に触れて頂きたいという想いから継続して配信しています。あなたにとって大切な方にぜひご紹介ください。

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