株式会社AWARDの渡邉です。
日銀YCC修正決定
について今回は取り上げます。7月27、28日にかけて行われた日銀金融政策決定会合において決定されたYCCの修正。いったい私たちにはどんな影響があるのでしょうか?
1.YCC(イールドカーブコントロール)とは?
YCCとはYield Curve Control(イールドカーブコントロール)の頭文字を取ったものです。
イールドカーブというのは、債券の利回りと償還期間との相関性を示したグラフで、横軸に償還までの期間、縦軸に利回りを用いた曲線グラフです。通常は債券というのは償還までの期間が身近ければ利回りが低くなり、償還までの期間が長ければ利回りが高くなります。
そのため、緩やかな右肩上がりの曲線を描くのが通常のイールドカーブです。
このイールドカーブのコントロールは、中央銀行が一定の水準の金利を目標とするために国債またはその他の金融資産を購入する金融政策となります。日銀は10年国債の金利を±0.5%以内にする、というルールを決めて国債の買付を行ってきました。
2.基準を緩めた意図は?
今回の金融政策決定会合では、長期金利の上昇抑制を目的に国債を買い入れる指し値オペの水準を従来の0.5%から1.0%に引き上げました。つまり、10年国債の金利が1.0%まで上昇することを許容する、ということになります。
実質的な緩和の縮小か?という声が上がっていましたが、日銀の植田総裁はこれを否定しています。
「政策の正常化へ歩み出す動きではなく、YCCの持続性を高める動き」
「2%の物価安定目標に到達できる確率を高めようという措置」
「長期金利が0.5%と1.0%の間に上昇していくことを容認する」
といった趣旨のコメントを金融政策決定会合の後の記者会見で述べてらっしゃいます。
3.市場への影響は?
市場ではこの決定を受けて一時的に大幅な円高が進みました。プチサプライズであった今回のYCCの修正で、ドル円相場は1ドル=138~141円の幅で短時間で大きく動いていました。
また、株式市場全体はこの決定を受けて金利上昇リスクを織り込んだのか大幅に下落しました。一方で金利が上昇することで恩恵を受ける銀行株は買いが大きく入り、日本の最大の銀行である三菱UFJの株価は1日で5.28%の上昇を見せました。
ちなみに上限を0.5%から引き上げられた10年国債の金利は、7月29日朝時点で0.54%となっています。元々の上限であった0.5%はすでに突破している形です。今後、今回の金融政策決定会合で決定されたキャップである1.0%に近づいていく可能性は高そうですね。
金利が上がったら、銀行は0.001%の普通預金をしてもらって、金利が1.0%の10年国債を買えばそれだけでリスクなく儲かります。金利が上がると銀行株が上がるのは、こういった商売上の仕組みがあるからとなります。
4.まとめ
日銀の金融政策の変更で為替市場、株式市場に動きがありました。ある程度予想されていた面もありましたが、市場ではプチサプライズとして受け止められています。
長期金利の上昇によって、固定金利の住宅ローンなどは借入金利が今後上がっていくことも考えられます。
良くも悪くも金利は経済に大きな影響を及ぼしますので、世の中の動向には注意を向けておきましょう。